お芝居つれづれときどき音楽

歌舞伎のこと、音楽のこと、いろんなこと、気の向くままによしなしごとを。

歌舞伎座&演舞場過去の筋書き(戦利品メモ2)

戦利品メモ第2弾、歌舞伎座と演舞場の筋書き22冊(^^) 1冊だけ大阪松竹座

(玉)=玉三郎さんのみ

(仁左)=仁左衛門さんのみ

(勘)=勘九郎=18勘三郎さん

(染):染五郎=10幸四郎さん

注記のないものは仁左玉

新橋演舞場

S48(1973),6 熊谷陣屋、直侍(玉)、かさね(玉)、封印切(仁左)

S51(1976),7 恐怖時代(玉)、廓文章(仁左)、時今也桔梗旗揚(仁左)、十六夜清心(菊玉、白蓮:孝)

S52(1977),6 千姫春秋記、其小唄夢廓(玉)、実盛物語(仁左)、梅ごよみ

S53(1978),2 盲目物語、五大力恋、将門(仁左)、文七元結、鷺娘(玉)

S53(1978),6 ひらかな盛衰記(仁左)、怪談月傘森、藤娘(玉)、夏祭浪花鑑

S54(1979),2 土蜘(仁左)、将軍江戸を去る(仁左)、娘道成寺(玉)、杜若艶色紫(仁左)

S57,4 【新装開場記念】寺子屋勧進帳(仁左:富樫)、梶原平三誉石切(仁左)、籠鶴瓶(玉:九重)、娘道成寺(玉)

S60,2 沓手鳥孤城落月、二人椀久、盟三五大切 

2003,8 阿修羅場の瞳(染)

大阪松竹座

H19,7 渡海屋・大物浦(仁左)、身替座禅(仁左)
海老蔵さんの代役で5日間?だけ仁左衛門さんが油地獄を演じ、最後の方に出た筋書にはにざ様の与兵衛写真も入っているらしい。これは入っていないもの。

歌舞伎座

S50,7 【初猿翁3段四郎13回忌追善】御浜御殿(玉:お喜世、仁左:助右衛門)、東海道中膝栗毛(猿・吉:やじきた、玉:市子、仁左:月田)、闘風時代(仁左)、助六(仁左:白酒売、玉:白玉)
S52,7 神田祭寺子屋(源蔵、戸浪)、於染久松色読販

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孝玉の神田祭の破壊力です…
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肩を抱く手が…(*´-`)
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ついでに2018年3月の神田祭玉三郎さんの衣裳が結構違うみたいですね。
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1982年と比べると、新婚カップルと長年連れ添った夫婦の差みたいな感じでしょうか。いずれにしても客席は当てられますなぁ(*´-`)

 

S57,3 かさね、盛綱陣屋(9染:小四郎)、切られ与三
S59,3 棒縛り(18勘、三津五郎)、杜若艶色染、金閣寺(仁左:東吉)、蝶の道行、雪暮夜入谷畦道(玉)
S60,6 【12團十郎襲名】渡海屋・大物浦(勘:義経)、かさね(仁左)、若き日の信長(玉)、鳴神(玉)、口上、助六(仁左:白酒売、勘:福山のかつぎ)
(過去の舞台:S59,3 金閣寺(仁左:東吉)、S59,9 伊勢音頭恋寝刃(玉))
S62,2 磯異人館(勘)、勧進帳(仁左:弁慶)(過去の舞台:女殺油地獄(仁左))
H14,4 松浦の太鼓(仁左)
H14,11 阿古屋(玉勘)、ぢいさんばあさん(玉勘)
H19,2 六段目(玉)、七段目
H19,4 【錦之助襲名】男女道成寺(仁左勘)、実盛物語(仁左)

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H21,1 【歌舞伎座さよなら公演】鷺娘(玉)、鏡獅子(勘)、鰯売(勘玉)

H25,10 いがみの権太(仁左)

前回ゲットしたのはこちら↓

部屋が筋書だらけに…(((^^)))

歌舞伎座過去の筋書き(戦利品メモ)

本日の戦利品メモ、歌舞伎座の過去の筋書き20冊(^^)(10/23:S58,3の写真追加)(2019/2/6:S62,3、H3,12、H4,10、H8,3のツイ追加)
(玉)=玉三郎さんのみ

(仁左)=仁左衛門さんのみ

(勘)=勘九郎=18勘三郎さん

[染]:染五郎=10幸四郎さん

他に注記のないものは基本的に仁左玉

 

S58,3 浮舟、助六(初役)

当時の筋書の写真は今よりもカットが大胆で素敵です。
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意休と助六を止める揚巻、初役にしてこの貫禄。意休は13仁左衛門さん、孝夫さんが歌舞伎座助六ということでお祝いでお出になったそうです。

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福山のかつぎは孝太郎さん。びっくりするほど今の千之助に似てらっしゃいます。

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内緒話の形、今年の七段目の玉三郎さんおかると仁左衛門さん平右も思い出す姿です。

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浮舟のショットも素敵…目隠しはあかんですわー!写真だけでどぎまぎします。ストーリは悲しいですけどね…。

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S62,3 【14世守田勘彌13回忌追善】 かさね、御所五郎蔵通し

H2,10前 十六夜清心、夫婦道成寺

H2,10後 十六夜清心、夫婦道成寺

H3,12 廓文章&刺青奇偶(玉、勘)、鷺娘(玉)、[染]:二条城の清正

H4,10 俊寛(仁左)、少々滋幹の母、鏡獅子(玉)

H8,3 廓文章、梅ごよみ(仁左、玉、勘)

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H8,6前 二人椀久、新口村、楊貴妃(玉) 、[染]:操り三番叟

H8,6後 二人椀久、新口村、楊貴妃(玉) 、[染]:操り三番叟

H9,2(2冊) 十六夜清心、山科閑居H9,6 新薄雪物語、かさね、[染]:団子売り

H10,1 【仁左衛門襲名】 寺子屋(仁左)、廓文章(仁左)

H10,2 【仁左衛門襲名】 熊谷陣屋、助六

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H12,1 吉野山&松浦の太鼓(玉、勘)、道成寺(勘)、阿古屋(玉、勘)

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今年の(右)と並べると、男雛女雛の並びが違います。

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藤太は猿弥さん。イヤイヤってしてる玉三郎さんの今との変わらなさよ。

………

H13,3 沼津、保名(仁左)、八段目(玉)、九段目

H14,3 二人椀久、十六夜清心

H15,3 浮舟、切られ与三 染:操り三番叟、勧進帳(義経)

H16,2 茨木(玉)、良弁杉由来(仁左)、三人吉三

H16,6 【海老蔵襲名】 寺子屋、口上、助六(玉、白酒売り=勘)

H22,4 【歌舞伎座さよなら公演】 寺子屋(源蔵=仁左、千代=玉、戸波=勘、菅秀才=金太郎)、助六(玉、くわんぺら=仁左、通人=勘) 中村屋:連獅子

 

以上

20181008 松本幸四郎ディナーショー@雅叙園

去年に続いて、行ってまいりました。

弁慶の舞と連獅子(それぞれ一部分)を一夜限りの舞台で見られるなんて、感激しました。しかも弁慶は滝流しの初めの部分だそうで。小道具の白紙の勧進帳も見せてくださって、昔は紙が破れることがあったそうだが今は紙と紙の間に繊維が入っていて破れないようになっている、という仕組みも教えてくださいました。

三大襲名のお話をなさる中でお父様のお話、「アディショナルタイムとか行ってますけど、来年ラマンチャをやるそうで。息子の僕から見てもまだまだ元気」と(^^)

白鸚さんのラマンチャ、ぜひ拝見したいです。

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マイム風の踊りはおかしくて、朝寝坊→着替えて出かける(※着物)→歩道橋を歩いて…→雅叙園幸四郎ディナーショーにたどり着くとゆー(笑)。始める前に「こういう設定です」と途中まで説明なさって、「説明しておけばそう見えなくてもそう見えますから、モノマネでも、『僕ドラえもん』(←声マネ)って名乗っちゃえば早い」と(笑)。しかしよく踊りながら解説をしゃべれますね?驚きです。踊り終えて

「これが今日の一番の大作だったので…ほっとしました」

襲名の合間にこんなこと考えてらしたんですねー(^^)

照れると耳に手をやる仕草(^^)

連獅子は踊り終えた後に蝶々の差し金をご自身でも持って解説、「…追いかける方はやってるんですがこれ(蝶々)をやるのは初めてで…」と楽しそうに蝶々を操って、段々前に出てきたと思ったら一番前のお客さんの頭に蝶々を止めてました。わぁ…自由(笑)。

答えに詰まって、冗談で「そんな簡単なもんじゃねぇんだよ(凄むフリ)」と幸四郎さんが仰ってもキラキラした目で見つめ続ける少年の純粋な眼差しが(^^)

で、「そこ(六方)に辿り着くまでもきついのですが、最後に出し切ること」というようなことを仰っていたかと…(悩む幸四郎さんが可愛すぎて記憶が曖昧です)

他に質問は、

Q.操り三番叟で見えていないのに後見の方とタイミングが合うのはなぜ?

A.企業秘密です

Q. 体力が必要なお仕事ですが何か身体づくりはしていますか?

A.してません。ジムに行ってから舞台に出ると僕の場合大変なことになるので、エネルギーをジムで使ってしまうので(笑)

Q.博多座で25日間伊達の十役と鏡獅子、大変な演目をされていましたが、体力を持たせるために気を付けていたことは?

A.博多座の場合は音がよい劇場なので劇場に助けられていました。

Q.南座勧進帳で滝流しを入れて上演される意気込みは?

A.父の襲名の時は滝流しをやったので、これで父の弁慶を全て受け継ぎたい。また、回数ではないですけど南座で100回目の弁慶になります。

Q.舞台写真で気に入っている写真は?

A.気に入っているものは…ないですねぇ、反省材料になってしまう。ただ、数十年経って見たときに「意外と大丈夫じゃないか」と思うことはあります。

とのお答え。相変わらずストイックというか、自分に厳しい幸四郎さんでした。

あと、質問タイム締め切った後に「はいはいはーい」って手を挙げてる男性がいらして、おお凄いなぁ…と思っていたら幸四郎さん、「同級生の〇〇くんです」と。お身内だったのですね、しかし紹介だけして「時間がないんで」と質問はスルー(笑)。

幸四郎さんが助六やるときの揚巻はどなたなのでしょうね、初役のときの相手役は経験者から?それとも仁左衛門さんと玉三郎さんのときのように初役どうし、もありうるのでしょうか。そうそう、助六の話の時に幸四郎さんが「今月は仁左衛門のおじさまが…」と仰って、推しの口から推しのお名前が出るしあわせを噛みしめていました…(*´-`)

トークの中で、新作もいろいろとやってきたというお話の中で、

・歌舞伎NEXTは水面下というか地下で動いています

・新作も準備中

というキーワードもあり、古典も新作も益々今後が楽しみです。

しかも踊った直後にトーク、ちょっと息整えつつ、よくしゃべれるなぁと。幸せなひと時をありがとうございました!

お料理

食事は和食フルコースでした。秋なので銀杏をかたどっていたり、もみじが飾ってあったりと目にも楽しいです。


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各テーブルに名前がついてるのですが、

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右下の「鼓」が少々珍しいなと。幸四郎さんが鼓お好きだからでしょうか?

美味しいお食事に舌鼓を打ち、ご飯のあとには楽しいショー。夢のような時間でした(^^)来年もまた行きたいです!

 

20180918児太郎さん夜話@歌舞伎座ギャラリー

ツイまとめ、すこし追記、写真1枚追加。

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博多座でのトーク幸四郎さんが秀山祭について、内容は明かさずにただ「びっくりしました…」と感慨深げに仰っていたのを思い出しました。復帰が本当に本当にうれしかったのですね。

猿翁のおじ様は初日に「必ず見に行きます」と手紙をくださって、本当にお越しくださったとか。別の機会にもお会いしたときに、その時はお二人で昔のDVDを見ながら「これやりたい、あれやりたい」とお話されていたそうで…胸がいっぱいになりました。

戸「(福助さんと玉三郎さん)どちらを見てるんですか?」との質問に

児「どちらも見てません。(玉三郎の)おじ様は見なくていいからと、何かあったら言うからと仰ってくださって。でも見てなくても汗が…」と(^^)

七之助さんの揚巻も勿論玉三郎さんに教わるそうですが、並び傾城をやらずに白玉をやったのは七之助さんと玉三郎さん、というお話をされてました。児太郎さんが並び傾城をされたときに七之助さんが白玉で、「ねぇ、大変なの?」と訊いてこられたとか(笑)。白玉の倍座っているけれど舞台が見られるので児太郎さんはあまり長いと感じないのだそう。 

さて「通り過ぎるだけ」発言に始まり今夜も絶妙に楽しい戸部さん。児太郎さんに「どんどん美しくなりますよね?」と訊いて答えに困らせたり笑

今回はちっちゃい子話はかんげん君だけでしたね。納涼出てなかったのであまり共演がなかったのかな?

そういえば夜話の依頼は源氏物語のお稽古中?に話が来て頭が回っていなくて、9月か10月と言われたのでじゃあ9月で、と受けちゃったらしく。(源氏物語のホン(最終稿?)がようやく来て…という裏話もw)平日だったので(集客が)大丈夫かなぁと思ってましたがこんなに来てくださって…と仰っていたので、発売から恐らく数分で売り切れたことを児太郎さんに伝えていただきたい、松竹さんー!

基本スタンスは終止真面目で、誠実な印象の児太郎さん。

「もっとお稽古します」、シンプルですけどめちゃくちゃストイックじゃありませんか?なんだか、すごいなぁ…

ところが最後に…

しかも大きく書いちゃったサインをすぐに閉じて見えないようにして、他のひとのようにサインの横で記念撮影はしないという笑 

ちょっとお茶目な一面も拝見でき、全体的に心がじーんとあたたまる夜話でした。雪姫という大役をお勤めのさなかの夜話出演、ありがとうございました。

20180909笑三郎さん夜話@歌舞伎座ギャラリー

ツイートまとめ、写真1枚追加しました。にこにこ笑顔が素敵な笑三郎さん夜話に行って来ました。

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NARUTOのお話

本編では男性設定だったのが続編?などでどっちつかず設定に変化していったとか。サスケの兄じゃなかったの!??

KAWAII KABUKI

伊達の十役

「伊達の十役は主役以外の方々も大変ですか?」との問いに「大変です」と即答してらっしゃいました。舞台裏はたいへんなのでしょうね。

 

2018年9月「贋作 桜の森の満開の下」@東京芸術劇場プレイハウス

一年前の夏、歌舞伎版に仕立て直された同作を見てあまりの衝撃に心に深く突き刺さった作品。それが早々に再演されると聞いて、あの衝撃を上書きしたくないと思ったのは確かです。けれど、上書かれるのではなく歴史が足されるのだ、と少し気持ちも落ち着いたころに、開幕しました。

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何と言っても深津絵里さんの夜長姫、です。ぎょっとするような幼子の高い声。夜長姫は16歳ですが、10歳くらいのような気もする声。そして鬼のひくいひくい声。変幻自在な声の使い方と、あの笑顔。可愛いのに怖い笑顔に魅せられます。ああ、耳男はこの声と笑顔に捕まってしまったのだ、と。この作品の主役は耳男なのかもしれません。けれど夜長姫のための物語、彼女に捧げられた物語だ、と感じます。

天海祐希さんのオオアマ。これほどに皇子が似合うひとがいるでしょうか。皇子のときには若々しさと気品、帝になったときには一段と帝位を持つものとしての大きさ、尊大さを感じさせます。何とも言えない目の表情にやられますね。騙されるのだとしても早寝姫がうらやましい…。歌舞伎ではないので舞台写真がないんですよねぇ、買いたかったなー!!

妻夫木さんの耳男、情けないおとこ。逃げるおとこ。だれがやっても耳男はこういうおとこなのだなぁと。気のせいでしょうけれど勘九郎さんの耳男の声と重なる瞬間がほんの一瞬だけ聞こえて、不思議なものです。

古田さんのマナコもさすが。こういう役、似合いますねぇ。衣裳も演出も違うのに、耳男とマナコは歌舞伎版ともなにか「質」が似ていて、夜長姫とオオアマは別の存在のように感じました。魂が同質かどうか、というような。どっちが先かわからないけれど、転生した連なりにいるものたちと、いないものたち。オオアマは転生した兄弟くらいの連なりはあるかもしれません…夜長姫はどちらの夜長姫も完全な別個、薄い血の繋がりすらない、というような…。しかしこれは物凄く個人的な感覚でしょう。

個人的な問題でどうしても歌舞伎版の印象が強く、前半は衣裳の違いや演出の違い、増えた台詞減った台詞、というところに注意が行ってしまったのが心底勿体なかったです。記憶の出し入れができたらよいのに…。

ここからはちょっと歌舞伎版の話を。つい比較してしまった前半部では、逆に歌舞伎役者のレベルの高さも感じました。例えばわらわらと群れる鬼たち、ひとでないものの異質な存在感をやるのに慣れているのが歌舞伎役者の凄さのひとつ。チラシに顔写真入りで載らない役者たちにもその異質な存在感が染み付いているのは、歌舞伎役者の特異体質とでもいうべきものでしょうか。男性が裏声交じりの女形の声をつかうとき、「日常にはないモノ」が自然とそこには沸き起こります。歌舞伎役者がやれば歌舞伎、ということばの意味をひしひしと思い知った気がしました。あの空気感は普通の役者には真似ができません。ずるい、ずるいなあ。主役級の方々を除くと、口跡の良さや声量の圧も歌舞伎のひとの方が勝っているように感じました(声量は劇場が違うので一概には言えないかもしれません)。脇のキャラクターの立ち方や、台詞の間のうまさも。最初に見たもののインパクトが強い、というのは当然あるとは思いますが。

 

しかしそんな想いも吹き飛ばして、後半、特に逃げていく夜長姫と耳男、そして最後のシーンは否応なく引き込まれました。席から立ち上がれなくなる感覚。現実に戻れなくなる感覚。果たして夜長姫はほんとうに存在していたのでしょうか…?創作意欲を外に求めた耳男の幻想ではなかったか…?すべては夢、まぼろしではなかったのか…?もとよりフィクション、芝居の世界の住人であるのに、そんな想いがよぎります。

ああ、確かめに、もう一度あなたがたに逢いにゆきたい。

 

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以下、歌舞伎版と違っている!とか同じ!と思ったところのメモ。盛大にネタバレなので未見の方は回れ右してくださいな。

(全体的に違っているけれど印象に残ったことのみ)

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地球の歩き方が本当にあるやつ(ニューヨーク?)だった。歌舞伎版のときは桜の森?だったような記憶が?

・オオアマはイルカをしょっていない!!!歌舞伎版のイルカ(入鹿)はなんだったの…!?

・姫たちは山車に乗っていない

・紐の見立て

・小道具が全体的に少なめ。冷蔵庫に入ったヤクルトは台詞にあるけど実際には出てこないし、鬼の学校の黒板もなし

ラ・ボエーム、ミミー!(オペラネタは挿入歌はやめてそう来たか。プッチーニ好きなの?)

・どこかにプリキュア…が台詞に入ってたような。よく聞き取れず。

・鬼がオオアマへの手紙を届け間違えない(出てくる夢を間違えるけど耳男の夢に行ってるからそのせいで謀反がバレるわけではない)

・早寝姫「少しも気が咎めませんわー」がなかった(あれ好きだったの…)

・疑似壁ドンがなかった(天海さんの壁ドン見たかったなー)

・片方無くした靴は燃やさず捨てるだけ(「ぼぉっ」が好きだったんだけどなー)

・「桜の下でつかんだと思った幸せが 背中合わせの不幸せ」はあった?記憶がないけど聞き漏らしたかなぁ。

・甍で落とされるとこで耳男の「虫もころさぬ顔して殺人未遂」がなかった?

・「モデルと〇〇には手を出しませーん」(女優じゃなかったのはなぜだろう?妻夫木さんの奥様は女優さんらしいが)(みんなほんと女優に手ぇ出してはるんですね~)

・都にチクりに行くとこで客席降り古田さん

・花道の代わりの正面の坂

・ノミを打つ音から音楽になる演出は一緒だけど鼓は出てこない(そりゃそうだ)

・桃太郎はひとりでした(そりゃそうだw)

・マナコをチクる耳男はマナコを本気で飛び蹴りしたり追いかけ回したりしない(そりゃそうだww)

・「一緒に転がるわ!」で床をゴロンゴロン転がらない夜長姫(あれもすきだったの)

・後半で桜色の布をふわーっと使うのは同じ感じ。去年はあれで花道をかけて行くのが大好きだったなぁ。

・夜長姫がしんでゆくときにすこし、海老反りではないけれどそれに近い動きがあって、もともとあったのかもしれないけれど、去年を経ての野田さんのリクエストなのかもしれないとも…、どちらなのだろう、過去のNODA MAP再演を見ている方にお尋ねしたい。

・音楽がほぼ違う(たぶん)。「私のお父さん」もウェールズ語の子守歌もなかった。(去年の感想の「音楽」参照↓)

201807 死ンデ、イル。(B)@東京芸術劇場イーストシアター

恐る恐る、見に行ってみました。

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結末の突如ポジティブな方向への転換は少し無理矢理に感じました。お芝居における主人公の絶望(というと大げさかもしれない)の時間が長いからでしょうか。99%がつらい時間で、最後の1%で力を勝ち取るというような。強い飛躍。しかし前作(「悲しみよ、消えないでくれ」)よりは苦手さは少なかったです。それは結局、その無理矢理なポジティブさのおかげかもしれません。チラシをよくよく見ると白抜きで「光れ。」と書いてあり、印象的な中央のタイトル「死ンデ、イル。」の方に目を奪われがちですが、「光れ。」にポジティブな結末は暗示されていたのかもしれません。
最後の最後の場面にすべてを集約させて、作者はこの絵が見えていたのだろう、もしくは描きたかったのだろうな、と思わせるところは「悲しみよ、~」と少し構造が似ています。

初めは、胡散臭いルポライターを嫌なやつだと思い、色々と炙り出されるうちに(見ている自分の)嫌悪対象が変わってゆき、最後にまたぐるりと戻るのが面白かったです。結局みな、触られたくない後ろ暗いことがある。というか、明確に後ろ暗いのは男たちばかりですね、そう言えば。対になる女性たちはただただそのことに怒っている。炙り出されるうちに「自分のあの事も聞かれるのでは」という素振りを誰も見せないのが少し愚かですね。自分は抉られないという自信はどこからくるのか。ただ愚鈍なのか。
お姉さんの旦那の行動が気持ち悪くてどうしようかと思ったのですが、ひとつ勉強になったことは、男は本当に酔ってるとは限らない「酔ったふりもする」生き物だということ。(酔ったからって緩みやがってコイツうっとうしい…)、などと手心を加えずに、迷わず蹴り上げていいんですね、よーし、覚悟しとけよ。

さて意外なほどに「悲しみよ、消えないでくれ」で見た役者さんの顔を覚えていました。TVも含めて役者さん、というか人の顔が覚えられないのですが、あの小さい空間で濃密な時間を見届けると嫌でも1回で覚えるらしい。(べつに嫌ではないの、言葉の綾)
ルポライターも体育の先生も叔父さんも、どこか前のキャラクターと共通項がある気がしてきます。先入観か、やはりひとりのひとが醸し出す雰囲気を全く変えるのは難しいのか。真逆なキャラではないですからね。
ルポライターと叔父さんがWキャストで、私が見たのはBパターン(ルポライター:小椋毅、叔父:古山憲太郎)だったのですが、この作品、B見るとAも見てみたくなりますね。逆も然りでしょう。演者が変わることでキャラクターは変わるのか変わらないのか。気になって仕方ないです。

ひとつだけ、最後に明かされる七海の姉の行動の心理が理解できませんでした。「失踪の理由が綺麗すぎる」から書き置きを秘密に?意味がよくわからなかった。夫のこと、ほんとうのことを炙り出したかったとか?しかしそうも思えないしなぁ。全て嫌になって妹にいなくなってほしかった、とか、こんな理由でいなくなった妹が許せなくなった、とかの方がしっくり来るかも。

脇にそれるけれど「叫ぶのは呪い」というのがちょっと意外な見解。叫びはエネルギーを消費してゆくので呪いにはならずにすり減ってゆく気がして。あるいは緊張やストレスを破るもの。発散するもの。呪いは、もうすこしどろりと溜まってゆくものな気がします(完全に感覚的な私見)。まぁ、叫び続けたら溜まっていくのかもしれません。

ちなみにアフターイベントの朗読つきの日。前作は朗読も込みで物語が完結した印象を受けましたが(朗読なしだとどういう気持ちで見終わるのだろう)、今作は一度きちんと作品が終わり、あくまで後日談に見えたのがよりよかったです。前回の朗読もかなり好きでしたけども。絵本を後日談になぞらえて見せる手法はかなり面白いです。童話のチョイスがまた上手いのです。うまくハマる童話をどうやって探してくるのでしょう。

最後に。
口悪いし拗ねてて愛想ないけど、なんだかんだ言って実は徐々に心を砕くようになっていそうな叔母さんが最後には結構好きになっていました。
しかし先生、後日談(朗読)で家に来てたけど、さすがに来れなかろうよ?そこはまぁ、いてくれないとね、小さなHappyEndの締まりがよくないからね。

あ、あと。芝居中ずっと高校生にしか見えなかった七海役の方が、カーテンコールに立った瞬間おとなの女性に見えてはっとしました。21歳だそうだから役に近い年齢ですけど。まだ高校時代の記憶はリアルな手触りとともに持っているのでしょうねぇ。