お芝居つれづれときどき音楽

歌舞伎のこと、音楽のこと、いろんなこと、気の向くままによしなしごとを。

2017年9月秀山祭昼の部@歌舞伎座

昼の部感想。夜の部とまた毛色が違って楽しい。気づけば萌え語りになってしまうのはなぜ…。

毛谷村(けやむら)

強くて心優しい六助のいい男っぷり。染五郎さんと子役との絡みが可愛くて可愛くて。なぜ母親がいないの?と泣く子供につられ、自分も母を亡くした身の上を思って泣く六助。おもちゃで遊んであげてもイヤイヤされるとことか、勘違いしたお園が切りかかってきて緊迫してるのに、目を覚ました弥三松が空気を読まずに太鼓をねだり、六助「今はだめ」弥三松「イヤ!」のやり取りとか、仕方なしに六助がでんでん太鼓しながら語るとことか、可愛い要素ありすぎて悶える。

押しかけ母に押しかけ女房で忙しい六助の家。お園はキリっとかっこいい女武道だったのに、六助が許婚だと気づくや急に女っぽくいそいそするのが面白い。空炊きはあかんけどね。確かめてから火をつけましょう。

敵討ちにいかんとするところで幕なので「ここで終わり?」という感想を見かけて、確かにと思いつつ歌舞伎の「この先まだあるけどここでお終い」的な幕切れに慣れてきたのだなあと思ったりします。まあきっと仇討は成功し、六助とお園は夫婦として姑と妹の子と一家四人で仲良く暮らすのでしょう。六助は尊敬する師匠の後を継いで家を盛り立てていくのでしょうか。

一応結末が気になって続きを調べていたら、通しでH23年に仁左衛門さんが初役でやってはったのを発見。@大阪松竹座。昼夜で盟三五大切との抱き合わせ。何それ美味しい…。あ、仇討はちゃんと成功してました。

道行旅路の嫁入

壱太郎さんってやっぱ色っぽいひとだなあ。本当に14、5くらいの若い娘に見えてきます。愛しい人を思う表情、子供を抱いてあやすしぐさ、そんな娘を見つめる母(藤十郎さん)の眼差しがね、ぐっとくるのですね。

極付 幡随長兵衛

吉右衛門さんの長兵衛の親分っぷりがとてつもなく格好いい。紺(黒?)の着流しに「ひゃああ格好いい!!」と心の中で悲鳴を上げていたら、着流しから紋付袴に着替えるところで「この姿もなかなか格好いいのですが、水野の館に訪問するので正式な装いに着替えるのです」的なイヤホンガイドさん解説。かっこいいって言ったね?やっぱ思いますよね?

f:id:andantepresto:20170910232305j:plain

染五郎さんの水野、高貴な雰囲気が大変似合います。舞台上の桟敷席がひらいて登場、こんなところにいたのかと意外で楽しい。しかしひたすら卑怯なお侍。

子役の長松が見得を切ってみせたりで客席も沸きます。子別れの場面では幼い長松だけが状況をわからずに「早く帰ってきてね」と言うのがなんとも悲しい。部下のひとりに耳打ちしてどこか使いにやらせたのは、棺桶を注文させに行ったのだとイヤホンガイドさんの説明。これ、解説されなかったらわからなかったなあ。

言葉がうつくしいなあと思っていたら、黙阿弥作でした。やはり好きみたい、黙阿弥さんの脚本。義太夫狂言ではないのに義太夫を取り入れたのも黙阿弥の工夫なのだとか。イヤホンガイドさんはいろいろ教えてくださるのでいいなあ。