お芝居つれづれときどき音楽

歌舞伎のこと、音楽のこと、いろんなこと、気の向くままによしなしごとを。

髑髏城の七人 ~風~

(2回目分追記。ツイッター+ネタとか増えた気がするセリフとか。)

ちょっと時間経ってますが、見てきたメモ。ネタバレしないと感想が書きにくくて、ツイッターでネタバレは申し訳ないのでこちらに。まだ見てない、これから見る方はそっと閉じてね。

ありえないくらい舞台に近い席で、もし鳥の殺陣をここで見られたら意識飛んでいたなと。歌舞伎なら花横みたいな、舞台中央から離れるけど花道に役者が来るとガン見出来る的ポジション。ここで無界屋襲撃を見ると一瞬ほんとに襲われてる現場に居合わせた気分になり怖かったです。

かつ襲撃シーンが今までにない演出。無界屋は門を閉じれば簡単には破れない作りという設定。その閉じた門をあえて開けて蘭兵衛を迎え入れたら、…というところに恐怖が増します。

冷酷な蘭丸 >>>> 蘭兵衛

今回の向井さん蘭兵衛は襲撃での殺戮を楽しむ蘭丸だったので余計に恐ろしかった。蘭兵衛である自分を完全に葬り去れる蘭丸。無界の里に未練はない。悲しみはひとさしもない。

蘭兵衛のときの存在感、カラーがもう少し出るとさらにいいなと。公演を重ねるうちに変わっていきそうなので、どんな蘭兵衛を見せてくれるかまだまだ楽しみです。

歌舞伎み溢れる捨之介

他に、歌舞伎!と思ったのは、天魔王のマスクを取って顔を見せて、あっ早変わり!というシーン。二役なのを楽しみにしてたけどそこは予想していなかったので、わ、やられた!って思いました。

 

がらんどうの天魔王

あ、口移しシーン、天魔王が蘭兵衛に口づけてから、改めて盃をあおり、覆い被さって口移ししていてびっくりしました。なぜ先に口づけた…!?と一瞬見間違えかと思ったくらい。襲われてる感も強し。殿を慕う蘭丸らしさを強く出すため…?いやー混乱した。→2回目見たときもそうだったので勘違いではないっぽい。天魔王が欲しいのは蘭丸、というのを印象付けるためでもあるかな。でもそれは天魔王の感情ではなく殿の感情、という気がします。

可愛い極楽太夫とやんちゃな紗霧

田中麗奈さんは可愛い系太夫ですね。戦う時の新撰組みたいななりが似合う太夫。だがアオの高田聖子さんのときの太夫っぽい演技/演出でそこはしっくりこない。ニンにないという感じかな。蘭兵衛とは仲間意識?と思いつつも太夫の方には恋心もあった模様。蘭兵衛の方は大事に思ってたけど恋愛ではなさそう、殿をまだ心の奥底で慕っているから。

無界の女たちを殺された悲しみがもっと伝わるといいが、早い段階で見たのでまだ少し板についてない印象。ラストシーンの去る場面はとてもよかった。あの場面は芝居が出来上がってる感じ。

→2回目見たときは、無界の女たちの名前を呼びながら髪の束を重ねていくところも、悲しみがひしひしと伝わってきました。とても良かったです。

可愛い系太夫だけどアカドクロと違って、紗霧とキャラ被ってなかったのが良いですね。岸井ゆきのさんの紗霧がさらにちっちゃくてすばしこくて、可愛いよりやんちゃな感じがあったからかな。側転したりと身体能力が高くて楽しい紗霧。

瞬尾

敵役では、毘羯羅の瞬尾、村木よし子さんがとてもよかったです。死ぬシーン、天魔王を支えてきてその意図に頷いて幸せに死ねる腹心の部下。見てる側は悲しいけれど、あの演出は今までで一番好きでした。殺されるけど不幸じゃない。ちょっとるろ剣の由美を思い出します。 

あと、たぶん安底羅の猿翁かな?可愛い猫(のぬいぐるみ)肩に乗せて出てくるのに萌えました。猫ですよ猫!そのまま戦うんですよ!オオアマがイルカしょって出てきた以来の衝撃だわ。

歌舞伎ファンとしては猿翁って役名にも反応しちゃいますけど、偶然ですかねえ…?

 

狸穴治郎右衛門、贋鉄斎

生瀬勝久さんの狸穴治郎右衛門がいい!やっぱこの方いいですねー!芝居が出来上がっていて安定感があります。どこを切り取っても違和感がないです。

あと無界屋で荒武者隊のダンス見て「我々は小劇場のオタ芸を見に来たわけではない」って~。小劇場ネタが入るとなんかうれしくなっちゃうのはなぜ。

ちなみに先日のくんろタイムは
「くんろい魚が…いっぱい…見てごらん…」て川を指差しながら(笑)

(2回目のくんろ)

最初、何言ってるかかなり意味不明でえ?って空気に(笑)


贋鉄斎、BGMにO mio babbino caro(私のお父さん)なのです、イタリアだからってなぜこのチョイス。しばらくはこの曲きくと桜の森を思い出してしまう。あと曲にひっかけて贋鉄斎が誰か(兵庫兄にだったかな)に「お父さん!」言うてましたぞ。捨之介には「今の名前は…L(エル)?」とか言うしね!デスノじゃないよ!躊躇なくぶっこんで来るなあ。

あと、初対面の兵庫に刀の扱いを叱るとき、怒るっていうより優しく諭す系に変わってて怪しさが増してたー!刀に謝らせる回数も増えてたような。


その他演出全般

役者の歌はなし、ダンスは少しあります。殺陣はやはり鳥のインパクトが強すぎて何者にも勝てません。動きを出すために回転舞台を活用して移動しながらの殺陣も多いのが新たな工夫?蘭兵衛さんはいっそもっと刀の殺陣を減らして鉄砲撃ちまくった方がよかったかも、2丁使いにするとか。当時の火縄銃じゃ現実的じゃないのでしょうか。

脚本はアオもアカも鳥も入っているし風オリジナルの部分も。二役Ver.なので台詞はアオの要素が強いような。裏切り渡京ではなく三五なのはアカっぽい、でもナルシスト(鏡が友達)設定ではなかった。かまいたち剣もアカ。初演、1997年版、ワカ、花は見ていないのでそこからのがあるかは不明。花見ておけばよかった、見比べたかったです。

(○○版の演出だね、と考えるの、歌舞伎の「○代目○○の型」だねというのと似ている、とふと思う)

一人二役のときは天魔王さまは捨之介と勘違いされるのがとぉっても嫌みたいですね。アオドクロでの「捨之介…?この私がか…!?」の一連の台詞が大好きだったのでそこが入っていてうれしい。一人二役だとやはり紗霧が「捨之介に裏切られた」感のリアリティが強くてショッキングで好き。「正体が知れたのでは都合が悪かろう、お主に変わってこやつらの首はねてやるわ」はなかったなあ。あれも酷くて好きなのですが。

捨之介が紗霧にべたべた触るところは「まだまだだな」的な表現、食べ頃発言ではなかったですね。「あと3年したらなんちゃらで大丈夫だ!」的なことは言ってました。あとね、触り方が染五郎さん捨に比べるとやらしくない(笑)。下心の(少)ない確認?そういえば無界の女たちにも色気振りまかないですね、風の捨之介。

さて、あと1回見に行けるので、その時にまた全体の芝居がどう変わっているかが楽しみです。

増えてた/変わってた台詞(たぶん)

(1)捨が正気を取り戻して、抱きつかれてべたべたして沙霧に傷のとこ殴られたあと、

捨「痛いのは生きてる証拠」

が追加されていた気がします。

(2)ラストシーン、沙霧が捨に抱きついて傷にあたって痛がって、さらに抱きつこうとして(捨)もういい、もういい、のあとに

捨「お前刺してんだぞ!」

沙霧「痛いのは生きてる証拠」 の台詞も増えてました。

(3)「生き地獄」→「涙の川」(かも)

無界屋に着いて太夫たちが去った後、太夫のことを捨が「生き地獄を見てきたって顔を」兵庫「生き地獄?」って表現していたのが、

捨「涙の川を渡ってきたって顔を~」

兵「涙の川ぁ?」に変わってた気がするのですが、風は元からかもしれない…記憶曖昧。戯曲読みたい。

 

今後も色々変わっていくんでしょうね。もう私は風を見られないのが切ない…皆様のレポでしのぎたいと思います。

(以下記録用、キャスト表)