お芝居つれづれときどき音楽

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2018年5月 坂東玉三郎京丹後特別舞踊公演@京都丹後文化会館


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12時頃につきましたが、周辺で唯一?の食事処きくのやさんは満員で入れず。会場でも食べ物の販売は少し。ちらし寿司850円、大福餅120円、タルト150円等。桑饅頭もあったかな?お弁当は扱ってなさそう。別の駅で食事はすませるかお弁当買っていって待ち合いで食べるかの方が安全かもしれません。来年はそうしよう。駅から最も近いコンビニも10分かかる模様。

のぼりをひとつ発見。駅正面の道路を渡って少し右(会場とは逆方向)に進んだところ。

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会場には過去の舞台のポスターもあって嬉しいです。f:id:andantepresto:20180521085004j:image

緞帳はさすが「丹後織物工業組合」のクレジット。f:id:andantepresto:20180521085038j:image

口上

明るい橙色の裃、紫の着物、桜の模様。今年のカレンダーと同じ拵えでしょうか。

京丹後は3年前から。10年前くらいから来てほしいとお話があったが「…ピンと来なかったのでございます」と正直な話しぶりに思わず会場も笑いが。丹後のちりめんの話をなさったたあとに

「こうして話していると…ちりめんやさんの回し者のようですが」とか、

雪で着るのは丹後のちりめんで新しく仕立てた着物とのことで「ちりめんは年月でどうしても黄ばみがでてしまうものですが、今回のは(真新しいので)私の白粉よりも白い」

とか、ちょいちょい笑いを入れていらっしゃるときの、ちょっといたずらっぽいような表情が好きです。

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言葉通り、真っ白な着物。牡丹?の帯、黒地に金、渋い色の刺繍。黒の背景に白い着物が映えます。ゆらめく蝋燭の明かりというシンプルな舞台装置と相まって、一対の美をなしています。

地唄、ということで三味線の方が唄も。音程がとても良くて言葉も聞き取りやすいことに驚きました。着物の袖と背に入った(紋を入れる箇所にあった)小さな模様はなんだったのかな、帯に合わせた模様?

動きを最大限に削ぎ落とした静かな舞踊です。ひとつひとつの小さな振りが、ゆっくりと途切れることなく続いている。しんしんと振り続ける雪のように。わずかな動きで表現されてゆくため、見る方も集中力が研ぎ澄まされていきます。クラヴィコードという、ごくごく音の小さな楽器のコンサートに行ったときと似ています。わずかな音色と変化を拾おうと、聞く側の照準が研ぎ澄まされてゆく…。

少しの表情の変化に万感の想いがひたひたと。離れてしまった愛しい人を思って寂しげな顔。愛しい人がそこに?とはっとしたときの表情、思わず傘を取り落として駆け寄る様。違った…あの人がここにいるはずがないのだ、と悲しげな顔。ひとつひとつが胸を打ちます。抑えた表現の振付だからこそ、演者の力量が問われそうな舞踊です。

葵の上

タイトルは葵の上ですが、彼女を呪って生き霊となった六条御息処が登場人物です。写真と違う打ち掛けでした。牡丹、もみじ?、藤の模様か。中の着物は写真と同じでしょうか。白地に何か模様が入っています。


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眠る葵の上を見つけたときに走る怨みの顔。徐々に怨みが顕になり、強まり、押さえられなくなる様。とうとう打ち掛けを脱いで白い着物になるときの、はっとするような印象深さ。能の曲を使っているからでしょうか、動きが能そのまま、というわけではないと思うのですが、踊りも能のような雰囲気、空気を感じました。

鐘ヶ岬

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道成寺の、見たい部分が詰まっていて感無量でした!

鐘を見上げて怨みがよぎるところ。一転して娘の無邪気な手鞠を見せたかと思えば、引き抜きで一瞬にして大人の女に変わる。白地に炎と桜の描かれた着物。安珍への怨みがつのり、鐘を見上げて決まる。鐘の上に乗ることはないのですが、道成寺の濃い部分が抽出されていて。菊之助さんの特番で玉三郎さんとの二人道成寺の映像をちらりと見たばかりだったので、あぁ目の前に本物がいる…!という想い。

 3曲踊り終えた玉三郎さん。2回目のカーテンコールかな?玉三郎さんがふっと娘みたいに微笑まれて、きゅんとしてしまいました。発売日に取ったのでとても良い席で堪能させていただきました。丹後、なかなか遠かったのですが来年も行きたいです。