お芝居つれづれときどき音楽

歌舞伎のこと、音楽のこと、いろんなこと、気の向くままによしなしごとを。

手紙を書くということ

頂き物をしたのでお礼の手紙を書くために久々に筆をとった。手紙を書くのはいつも「久しぶり」になってしまうので、毎回レイアウトのお作法を調べて思い出しながらである。
小さい頃はよく祖母に手紙を書いていた名残か、綺麗なレターセットや切手を集めておくのが好きだ。大好きなモチーフの入った美しい便箋があればつい手に取ってしまう。年にたった数回のこんな日のために戸棚で待ちかねていた紙物たち。便箋を選び、封筒を選び、切手を選ぶ。季節の挨拶を考え、結びの言葉を考える。主題とは関係のないそれらの彩りがこの上なく愛おしい。
メール、LINE、便利なものたちを使って要件だけの素早いやり取りをしているのがわたしの日常である。しかし手紙を書くときはひどくゆっくりと静かな時間が流れている。急いては文字が乱れる。すっかり文字を書くことから遠のいてしまった今日では、丁寧にと気を遣わなければ字も読みやすく綺麗にならない。これほど相手のことをじっくり考えて向き合う時間は、なんだかとても貴重だ。手紙に限らずとも文章を書くというのは心を取り出すみたいな行為だけれど、取り出した心にたくさんの想いを添えて、彩って渡すのが手紙だと思う。