お芝居つれづれときどき音楽

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2023年3月歌舞伎座1部「花の御所始末」感想というか個人的な解釈というか。

「花の御所始末」、わっるい幸四郎さん祭りでしたね。もうバキバキに性癖に刺さりまくりましたよ。千穐楽も終わったのでネタバレありで感想というか妄言を。

花の御所始末ポスター

リチャード3世を読んだことがないのですが、義教が野心を持つに至る経緯について妄想が膨らみまして…

(1)自分は次男で将軍になれないことが不満

(2)母親は長男より自分を可愛がっている→将軍になれる可能性ワンチャンありそう

の2点、これは作中で描かれているところですが、(1)に至るまでにも、満家がそれとなくずっと焚きつけてきたのだろうなと。

例えば、「あなたは素晴らしい才覚をお持ちだ。ひょっとすると義嗣様よりも優秀かもしれませんな。御次男というだけで家督を継げないのは何とも勿体ない」とか(妄想)。

事あるごとに褒められ、いつの間にかその気になり、それが元々の自分の意志のようになる。満家はその野心を支えてくれる共謀者にすり替わっているが、そもそもの首謀者は・・・。

で、
(2)母親は長男より自分を可愛がっている
について、義教は特に疑問を持たないんですよね。何だかわからないけど母様は兄上より僕の方を可愛がる。ラッキー、くらいな感じか。まあたぶん、理由なく兄弟差がつくことは現実にもある。理由がなければ一人目可愛くない症候群か?とか思ってました。

ところが今回愛情の差には理由があって、母様は満家と浮気していて、義教の父親は満家・・・えーっ!!

てっきり、義嗣(兄)は笛のうまい妾の子かと思ったのですが、違うのですね。そっちかい。母親は浮気のほうが本気になって、浮気相手との子の方が可愛くなってしまったのか。で、恐らく満家は野心を持って浮気しているよねと…

義教の父親は満家、ということだけが妹から明かされるのですが、だとすると、だとするとですよ。全ての発端は満家で、義教は満家を頼もしい家臣と見ていたけれど、実は義教は満家の野心の駒でしかなかった、という構図が一挙に見えてきて、ぞっとするわけです。

義教自身はここで、自分が義満の子ではなく本来は正当な後継者ではないこと、母が自分を愛するのは、浮気相手の方を愛して父を愛していなかったからかもしれないこと、満家の手のひらに転がされていたこと、などに思い至って、満家を憎んだのではないかと。

(見てる側的には、義教と左馬之助の顔が似ていることもこれで説明がつく…!などと思ったりw)

ちなみに、義教が義満の方をころそうと思い始めるのは、「ご病気がいついつまでに快癒します」と陰陽師に言われるあたりで義教が密かに険しい表情をしているので、その頃から頭にあったのではないかと。「え、回復しちゃうの、そろそろ家督継げると思ってたのに」ってところでしょうか…怖い怖い。

その後、長男廃嫡作戦の頼みの綱の母様が亡くなってしまう(理由は不明)のと、奥さん亡くして妾をあてがわれた義満が元気百倍!まだまだ長生きするぞ!って感じになってしまい、自分が家督継げるか怪しくなってくるので、これはやっぱ弟ころして父もころすしかないかーってなるのでしょうね。お父さんの方は別に長男廃嫡したいわけではなくて、改心するなら家督継がせるも選択肢にあったのでしょう。

まだ、義満は自分の父親だと素直に信じているときに考えて実行に移すのですから怖いですよね。いや怖いんだけど格好いいのよねなぜか…欲しいものを力づくで獲っていく幸四郎義教…。左馬之助と入江ペアに色々言いかけるとこも、やなやつーなのになんか刺さるのよ性癖に。何ですかあれは。

で、文字通り父親を倒して自分が天下を獲れた義教の前に黒幕のように登場する満家。実の父だと知られたことを知っても動揺も見せない、むしろ不敵な感じすらする。義教は自分がトップをもぎ取ったと思った次の瞬間に、あなたは私の手のひらの上です、と言われたようなものでは?この時にはもう、将軍職を無事手中に収めたら、満家をころす可能性も芽生えていた気がします。

で、無事将軍になれて天下が義教のものになって、当然のように満家を遠ざけるようになる。なぜ遠ざける、良心が咎めるからだと満家は言いすがるけれど、違う気がして。満家が近くにいると自分はまだ操り人形のような気がしてしまうからではないか。満家の意見を聞きたくないのもそれが理由。そして何よりも、自分の実の父親だから。家臣が実の父親だという事実を認めたくなくて、遠ざけるのではないか。

でもまだころしてなかったのが意外と言えば意外で、そこには親子の情というよりはもともと信頼していた(父親のだけど)家臣だった、というのもあったのかなとか。でも満家が言っちゃいけないことを言う、「あなたは親殺しではない」と。いやもうそれ言っちゃったら「なら親殺しになってやるよ!!!」ってなっちゃうじゃーん。って見てて思いましたよね。もうさあ。破滅の道まっしぐらよ、満家さあん…。

ここのやり取りで少し不思議だったのが左馬之助の自死を「たった一人の息子を失った」と表現するんですよね。あれ、義教も「実ハ」息子だよね?なぜ「たった一人」なの?と疑問符。あれはわざとなのかなあ。あくまで臣下の分をわきまえてますよ、だからまたお傍につかせてください、という意味?でも最終的に義教を「我が子じゃ我が子じゃ」ってバラすから、意味なくなっちゃうんですけどね…不思議でした。

で、実の父親も倒(ころ)して、陰で糸を引く人物もおらず本当の意味で自分が天下を獲る。けれど亡霊が出てきて責め苛みやつれていく義教。あれは何なのですかね、それこそ良心の咎めなのか、自分の血縁を経ってきてしまったことへの不安なのか、それとも本当に亡霊が怨念たっぷりに出てきただけ(だけ?)なのか。

まあそんなやつれた幸四郎さんも格好いいので良き…

でとち狂ったせいなのか、都合のいいことを言ってくれる陰陽師も「嘘つきー!」ってころしちゃう、そこまではともかくも、あの絶対いうこと聞くマンの家臣二人までころしちゃうの。なんでや。抜け穴作ってくれたし逃げるときも必要やろ、あの二人。

という疑問をふっかけたまま、あ、そういえばこの人いたわ!!って人を出すのうますぎますね。目を切られて目が開いたってのもうまい台詞すぎるでしょー。傘取る前に声で「愛之助さんや!冒頭の家臣!!!」ってわかっちゃうのですが。はー、あの時から恨みを募らせて一揆の頭領ですよ、胸熱。

で、愛之助さんに持ってかれそうになるんですが、そこはさすが義教。しにざまがすごい!!!あんなに乱心していたのに、俺は将軍義教だあああああってしんでいく。なんだよ、わるいやつなのに最期まで格好いいとかずるいわ。まあそんな幸四郎さんが好きだよ!

っていうお芝居でした。はー、もっかい見たかったですわ。えぐいけど好きすぎる。

取っ散らかった感想を失礼いたしました。