お芝居つれづれときどき音楽

歌舞伎のこと、音楽のこと、いろんなこと、気の向くままによしなしごとを。

髑髏城の七人 上弦の月@ステアラ&ライビュ

先に下弦を見ていて、12月末に初めて上弦を見たのですが、びっくりしました。えっ、全然違う、違う話だ。同じ演出ならネタバレになっちゃうから、先に上弦を見とくべきだったかなとか思っていたのですが。いざ上弦見てみたら杞憂でした。

ここから超ネタバレ感想です。

まだ見てないこれから見るという方は、見たあとにどうぞ。

下弦との違い。いやもちろん、セットは一緒だし台詞は一緒だし色々一緒なのですが、
演出、違う。
上弦の方が…救いがない。天魔王のラストと、それを見た捨の慟哭。そして、ボロボロの捨に「生きろ」と引っ張っていく霧丸。

俺が囮になってひきつける、の意味が他の捨と違う。他の捨は自己犠牲でしょうか。生きたくないわけじゃないけど、それよりも皆を助けたい。上弦の捨は、このときもう死にたくてたまらない。死ぬ機会があるならちょうどいいと思ってしまっている。

家康に縄をかけさせる時も、そもそも生きることへの執着はない。霧丸に引っ張られて無理に生きようと足掻いたけれど、

やっぱダメだ、天魔王の策略に捕まっちまった。みんな、すまん。ここが俺の命の捨て所なんだ。わかってくれ。
そういう感じがします。
だからラスト、福士蒼汰さんの捨は「がらじゃあねぇやあ」って去って行くときも無理に笑顔を作っていて、このあと、捨はほんとうに生きていけるのだろうかと心配になる去り方です。でも霧丸が追いかけていってくれてるから、傍にいて生きろと言ってくれるから、きっとボロボロでも生きてくれるのかな、そういうラスト。霧丸を紗霧じゃなくて男にした理由もわかったような気がします。青春時代を一緒に生きた仲間、同志が死んでしまった今、色恋抜きで力強く引っ張ってくれる新しい仲間が必要なのですね、この捨には。死のうとでもしたら「ばかやろう」って、対等な立場で殴って引き戻してくれるような奴が。
(紗霧も捨を殴る描写はあったりしますが、少しそれともニュアンスが違う気がするの。)
ねぇこれ、ほんとうに下弦と台本一緒ですか…?いやたしかにセリフとかはほぼ一緒なのだと思うのですが。天魔王の最期の描写が決定的に異なり、言わばト書きの部分が違います。ト書きには書いてないのかな、そうか。そうか…「よろしく」というやつか…(たぶん違うぞ)

さて、捨之介以外のキャラのことも。

早乙女太一さん天魔王

冒頭からこの人の高速の殺陣が見られるなんて、なんという幸福。しかし天魔王は無敵の鎧来ているときはあまり刀を抜かないので、もっと刀持たせて~~と思ってしまうわがままな気持ち。刀を持つと本当に無駄のない動きで、剣舞か???と思います。敵さんはやられた認識のないうちに殺されていそうです。

ライビュで見たときに、映ってる範囲が狭かったせいもあってか、子犬を転がすようにさらっと剣を振るって蘭兵衛がやられたように見えて、あれ!?もうやられたの???速い…てなりました。
着物を着ないのが残念ですが、扇子の扱いも綺麗で惚れ惚れします。扇子閉じると刀みたいにくるくる回しているのが気になって。扇子より刀持ちたいのかな?て(笑)

人物描写については、こう来たかああああああ!っていう。ある種、子供みたいな天魔王。全能感を持ったままの、残酷な子供。捨が刀を止めたのに自らを刺し貫くのは、見下していた捨に情けをかけられるなんて許せない、しかし鎧なしでは勝つ術がない、ならば相討ちに引きずり込んでやろうということなのか。
(太一天なら鎧なしで戦っても勝てるわと思うけど言っちゃダメ!鎧剥がされたショックで気持ちが弱ってるゆえに負けちゃう描写だから…気持ちが強かったらわりと余裕で勝てた…ね…)

三浦翔平さん蘭兵衛

覚醒後、天魔王と瓜二つになるのが印象的な蘭兵衛。捨を切ったとき一瞬、天魔王?て見間違えました。太刀筋違うので蘭だとわかったけれど、なんでしょう、身長や体格が近いのでしょうか?あと髪型?
蘭丸になると本当に一切蘭兵衛はいなくなって、殺戮を好む、楽しむ恐ろしさ。「蘭兵衛は俺が殺した」という台詞がこれほどしっくりくる蘭は他にいないかもしれません。太夫にも、無界で誰が救われる!と吐き捨てる蘭。
蘭兵衛のときからその片鱗はあって、鉄機兵が襲いに来た時も、なんというか…戦いを嫌がってはいない。例えば、鳥の太一蘭は「相手すんのめんどくせえなあ」なんですけど、三浦蘭は「そっちがそうくるんなら容赦しねぇぞオラ」って感じ。うーん、うまく表現できない。どなたかが元ヤンって呟いていた気がするのですが、そんな感じかも。

高田聖子さん極楽太夫

すっごい好き。歌も上手です。シリアスもギャグも違和感なくやれる多才な方ですね。蘭兵衛がいつか無界から離れて元の場所に帰ってしまうかもしれない覚悟をずっと持っていて、引き留めるけれど、駄目だった時の覚悟もしているひと。歌の歌詞のとおりなのですが、それがすごく納得のいく人物描写でした。蘭とは恋愛感情は一切なくて、居場所を作るために戦ってきた同志。
殺された娘たちの名を一人ずつ呼ぶシーン…涙を止められません。
蘭を呼び捨てなの、今までの太夫は皆「さん」付けだったので初回は違和感があったのだけど2回目にはもう聞き慣れて、しっくりきました。ずっと呼び捨てで、無界を襲いに来た蘭兵衛に最後に問うときだけ「蘭兵衛さん?」とさん付けになるのもたまらない。蘭兵衛を撃つときに唯一顔を背けている太夫で、撃った後、呆然と蘭兵衛のもとへ行く。真っ直ぐ見て撃つことは、とてもじゃないができないんです。

平間壮一さん霧丸

よく飛び跳ねて身体能力の高い霧丸です。見ていて気持ちがいいです。最初は悪ガキっぽくも見えるのですが、「お前顔つきが変わった」と兵庫に言われるように、段々と頼りがいのある顔つきに。最後にはほんと、この霧丸が捨之介を助けたんだ、と実感できる。ラストシーンで捨に詰め寄る霧丸を捨が思わず抱きしめて「恐れ入ったよ」にぐっときます。青春と呼ぶには過酷だけれど、まるで青春ドラマのような。

 

さて、以降ツイまとめ中心のさらに雑多なメモです。 

アドリブ/日替わり

時系列で行くと

・贋が玄翁でツンツン→いい声を上げる捨

・どんどん下手側に寄っちゃう捨→「そっちは暗いから」と捨を戻す贋

・贋「この玄翁は触れると快楽を…ちがーう!お主が勝手にやっとるだけだ!お主にそんなことやらせたくないんだ!」

・贋「お前はこっちに来るな!でもそんなお前も大好きだ!」捨「俺も大好きだ!」相思相愛(^^)

・わーわー言ってて台詞被る→捨「先に言うな!」贋「お前の心がわかるんだ!」

・収集つかなくなる→贋「用がないなら帰れ!」捨「そうだった忘れてた」贋「忘れてたのかよ」で捨が斬鎧剣の仕掛けを書いた紙を渡す(ようやく本筋に戻るw)

・100人切れる刀も頼んで捨が去る

・贋「せわしない奴だな…あんなことして後で怒られても知らんぞ」(せわしない奴、の前にもアドリブ台詞あった気がするのですが忘れました)いやー楽しかった!

前回は「負けないで」だったかな…違うかも…

くんろアドリブがなくなった代わり(?)に、歌が毎回(かな?)違うんですね。荒武者隊ズで「今日はこれで行こうぜ!」とか決めてるのかなあ。 

ライブビューイングの良さ 

 

カテコ

 

はー、あと見に行けるのは一回です。来月、別れを惜しみながらしみじみ見に行きます。