お芝居つれづれときどき音楽

歌舞伎のこと、音楽のこと、いろんなこと、気の向くままによしなしごとを。

20190209梅枝さん花道会セミナー@花篭

自分メモ。どきどきしつつ花道会セミナーへ。地声はけっこう低めでいいお声の梅枝さん。阿古屋の話をたっぷりと伺えました。

◆阿古屋について

阿古屋の話が出たのは一昨年の10月、玉三郎のおじさまと秋の種色で共演、児太郎さんとお琴を弾いた。児太郎さんと同じ楽屋。児太郎さんは三曲をすでに稽古していたが、梅枝さんは胡弓はやっていなかったので、お稽古を開始。
12月、三曲をおじさまに見てもらいます!と児太郎さん(すごい自信だなby梅枝)。→明日になりました!と。その流れで玉三郎さんから梅枝さんにも「いつ見せてくれるの?」と聞かれ「いつでも大丈夫です」と言っちゃって、あさって見せることに笑 1日2日でどうなるものでもないので、それまで練習した成果をお見せした。
そこで阿古屋OKが出て、三人交代でやること、「私は岩永で出るから」と、そこまですでに決まっていたそう笑 岩永やりたいと前々からおっしゃっていたが、梅枝さんは冗談だと思っていた。
楽器は地方にも持っていって練習したが巡業やまつもと(楽屋が狭いので三味線だけ)には持っていけず。
翌年7月に12月公演が確定。
8月にも一度見ていただいた?(記憶曖昧です)
10月?11月?スチール撮りの時に玉三郎さんにお越しを願い、衣裳をつけての演奏も玉三郎さんに聴いてもらうことになって、撮り終わってから弾くのかと思ってたらすぐに「弾いてごらん」、と撮られながらの演奏(°▽°)(ひええ)全然弾けなかった。
11月中頃、初めて衣裳をつけての稽古。二週間での調整が大変だった。俎板が音を吸収してしまう等々。そのせいで胡弓は斜めにしないと音が出ないとか。

本番は毎日玉三郎さんからダメ出しがあり、児太郎さんとお互い内容を共有していた。玉三郎のおじさまに駄目を出された所を、おじさまが(舞台で)いつもよりオーバー目にやってくださるのだそう。
これが継承なのですね…!
4回目くらいに「空間支配についてどう考えている?」と玉三郎さんに聞かれて、余裕がなくあまり考えておらず返事につまる。5回目にそれを意識しすぎて全然ダメで、「今日全然ダメだった…」と言ったら児太郎さんが「大丈夫でしたよ!」とずっと励ましてくれた。戦友です、と。
素敵な関係…!
空間支配については、コクーンで笹野さんからも似たような話を。お客様にも役者にも糸があって、お客様よりも少し張って役者が演じるとお客様が乗ってくださる、というような話。笹野さんからかなり刺激を受けられたご様子。
6回目(梅枝さん最終日)はもういい!と吹っ切ってやってうまくいった。
児太郎さんは華があり、大きな芸、空間支配ができるのでうらやましいと思っている。不器用なりにお客様に伝えようとする熱によってそうなるのではないか、と。
今年は空間支配がテーマだそう笑

玉三郎さんからの言葉が色々と印象的だったのですが、番外編的に
「三味線は私苦手だからよくわかんない」
っていうのがー!
ナニソレ可愛いんですけども(^^)(^^)(^^)
ちなみに梅枝さんはお琴が苦手だそう。
「弦が13本もあるんだもん!三味線は三本なのに」
そこですかー!?笑

阿古屋をやることについて周囲のコメント
お父様からは「すごいな」と、お母様も「よくやってる」と。
「よくやってるのはわかってる!」笑(客観的な評価・アドバイスが欲しそうな雰囲気?)
萬太郎さんからは(「あれ?12月出てたっけ?あ、同じ楽屋だったな」と)特にコメントなしだった模様(^^)
(勘七ご兄弟なら絶対会話あるだろうなと思ったり。やはりあのご兄弟は仲良すぎなのかしら?)

阿古屋は、菊之助七之助さんがいらっしゃるので自分ではないと思っていた。(児太郎さんと違って)家の演目でもないので。お二人がやらなさそう(雰囲気で察するらしい笑)となった時には児太郎さんがやりたいやりたいと言っていたので、阿古屋は一時代に一人という、僕らの勝手なイメージですけど。
でも児太郎さんがやることになり、梅枝さんにも白羽の矢が立った。
やってみて、みんながやらないのもわかった(それほど大変らしい)。
玉三郎さんから「父ちゃんたちのやってないことをやってるんだから胸を張りなさい、何か言われたら『お前できないだろ』って言いなさい」と笑

本番では色んな女形さんが阿古屋を見に。
右近さんは、同座したときに梅枝さんが楽屋で三曲を練習していたのが聞こえていたようで、「頑張ってたのを知ってるので嬉しいです」と泣いてくれたそう。
壱太郎さんも楽器が弾けるならと玉三郎のおじさまから声をかけられているらしい。
(が、二人の大変さを見て、諦めたわ、と!?)
(阿古屋は)元が(12)仁左衛門さんですから、関西の方がやったら面白いと思うんですけどね、と。
司会「梅枝さんがお尻を叩いてみては?」
梅枝「大変さも知ってますからねぇ…」←よっぽど大変だったご様子がその後もしばしば。

七之助さんもよく見に来てくださって、楽器のことはわからないけどと、傾城のありかたについて、ここはもうコンマ何秒止まった方がいいよ等アドバイスをもらった。

さわりは踊りではない、という玉三郎さんのお話から、
こう(やってみせる梅枝さん)すると踊りになってしまう、娘役ならそこ(上半身の肩の辺り)を使ってもいいけれど傾城は格が出なくなってしまう。でもそれを意識すると今後は(動かな過ぎて)もっと大きく動きなさいと言われる。
(やって見せてくださって、体全体で動く感じ)
それが難しい、と。義太夫狂言で傾城は阿古屋しかないのではないか(遊女はあるけれど)、だから参考にできる役がない。阿古屋は阿古屋。女形がずっとメインで、しかも死なない役は珍しい。(死なない!たしかに!と納得)

◆2月「暗闇の丑松」のお里

ご自身は3回目だが周囲が皆さん初役なので段取り等が大変。
「台詞を教えたのが3,4回ありました」
お里は素直な子なのでその場で起きたことに対して反応しているので、心情は難しくはない。ただ忙しい。
兄の死に際をずっとじーっと顔を見てらして兄弟愛を感じたという司会の方に、「たまたま」と爆弾発言w(照れ隠し?)
母役が人によっては、母と兄の後ろの取り合いになるらしいw(今月はそうではないとのこと)
「お月様も…(台詞失念)」をさらっとなさいますね、と司会さんから。
→今月いつもよりすし屋が(?)長いので、お客様が離れてしまうから、巻けるところでまいとかないと、と。
今月はすし屋、暗闇の丑松、熊谷、名月八幡祭、暗い話ばかり笑
でも今月の名月八幡祭は最高ですから見てください!!!とめっちゃ推してらした。(すし屋は暇だったら…てそんな謙虚な~(^^))
舞台稽古で名月八幡祭を見て、「いい芝居見たあ~」と思ったそう。

◆花魁草、その他の話題

花魁草、ああいう役はとても楽しい。如何に梅枝だと気づかせずにやるかを意識していた。幸四郎さんと、こうやってみたいですと相談しながら作っていた。

司会「特に共演したい立役さんは?」
→芯になる立役の方とはほとんど相手役をさせていただいているが、唯一勘九郎さんとだけない(共演はあるが相手役ではない)ので一度やってみたい。いつも七之助さんがいますから、と。

歌舞伎は筋が通ってないところを力技で幕を閉めるところがある。12月昼の部のお染七役でも
「とんだ判事ものだねぇ」
玉三郎さんがやってみせて
「こうしないと幕が閉まらないんだよ!」と仰ったとか笑

「楽器弾いてないとこんなに暇なんだ」by梅枝
よっっぽど阿古屋大変だったんですね。

◆役作り

コクーンのような新作は別だが、古典はまず型を身体に入れて、その後心情を乗せていく。

◆今後の予定

五月は團菊祭だからたぶん歌舞伎座、と。
「何やるんでしょうねーぇ?」と思わせぶりに仰りつつ(もう決まってるのでしょう笑)、人がいっぱい出るやつがなにかあるらしい雰囲気。気になります。

◆質問タイム

Q.コクーン歌舞伎について

コクーンは笹野さんから刺激を受けた。
七之助さんとの共演は、彼が女形なので立ち役にここには立ってほしくない等わかるのでとてもやりやすかった。やりにくい部分は一切ございません!(力説笑)
七之助さんも、(立ち役から見た)女形の重要性が改めてわかった、と言っていたそう。コクーン七之助さんとぐっと距離が縮まった。

Q.衣裳について
玉三郎さんはご自前の衣裳、梅枝さん児太郎さんは新しく会社が作ってくれたものを着たそうです。今後阿古屋をやる人がいれば、それを着るだろうとのこと。
玉三郎さん、南座向けにもう一着作るというお話↓ですよね。阿古屋の衣裳自前で2着持つのも凄い話、しかも後輩への継承を前提に)
https://www.kabuki-bito.jp/news/5269

Q.父上以外で尊敬・目標とする女形さんは?
玉三郎のおじさま、と即答。女形の最高峰。事細かに教えてくださり、感覚的に理解していることを理論でも説明してくださる。他は、この役ならこの方というイメージがあり、皆さん尊敬の対象。

Q.二人藤娘について
梅枝さんは藤娘は経験があり、児太郎さんは玉三郎のおじさまと二人藤娘をやっていたので、それぞれの踊りを擦り合わせながらやることができた。玉三郎さんパートを梅枝さんがやったので、梅枝さんの方がお姉さんという設定を崩さずにやった。

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ぜひお聞きしたかった阿古屋の話をメインでお聞き出来て楽しい時間でした。ありがとうございました!