お芝居つれづれときどき音楽

歌舞伎のこと、音楽のこと、いろんなこと、気の向くままによしなしごとを。

「十代目 松本幸四郎、高麗屋三代襲名披露を語る」セブンアカデミー@アークヒルズクラブ

一か月以上ぶりに幸四郎さんのお姿を拝見してきましたー!アークヒルズクラブという会員制クラブの中の、広めの宴会場?みたいなところでの開催。場所はサントリーホールの向かいにあるビル。

司会の方が染五郎くんの美少年ネタを振ったので「僕も昔は美少年とか貴公子とかプリンスとか、全部言われてました。僕の方が言われてました」来ましたーどや感w「僕の方が!」が持ちネタになりつつありますね。

この辺りの配慮も珍しいですね。トークは司会の方がとても丁寧に準備されていて(台本があったらしい)、前回の襲名から順を追って真面目なお話を中心に。でも幸四郎さんの面白いノリには司会の方も面白く返すのでバランスが良くて楽しかったです。司会の方のお名前も控えておけばよかったですなぁ。

襲名の演目の話は結構詳しく、勧進帳の弁慶は「2回目にして大変だということがようやくわかった」「(弁慶をやる)回数は多くないと思うので一回一回最後のつもりで取り組んでいる」と。車引の松王丸は、勘九郎さんの梅王とやれてうれしい、と。博多座の伊達の十役は会社からの提案だそうで。会見で白鸚さんが幸四郎さんの政岡を褒めていたので、(演目決めの打合せなどで)言うかな?と思っていたけれど「親父からは一言もないですからね」ですって(^^)

似たようなお話はインタビュー記事等でも読んでいたとは思うのですが、ご本人の口から聞くと重みがひしひしと伝わってきて、じーんとしました。お話聞けてよかったです。

質問タイム

襲名に関することに、と一応前置きが。何か考えてくればよかった、油断していました。

大森彦七」と教えていただきました!感謝ー!!一番最近ですと1999年に2白鸚さんが演じられているようです。

http://www.kabuki.ne.jp/kouendb/sp/perform/search.php?kr=1970

Q. 道成寺をまたやってほしいのですが
A. 「道成寺は、やりません」とわざとの即答具合がおかしかったですw
「奴道成寺は踊っていきたい曲ですが」と仰ったので、奴の方はどこかで近々かかるのでしょうか?
Q. 鬼平をやってほしい
A. 祖父と叔父がやってますけどねぇ…(うーん、という感じであまりノリ気ではなさそう)

退場時には入場時と逆方向のルートを司会の方が促してくださり、配慮の細かい方で素敵でした。幸四郎さんは紋付のきちんとした格好(ご本人曰く普段着w)なのに、相変わらず面白いことを挟んでくるゆるゆるっぷりに大いに笑いました。前日は博多でお練り、この日もそのまま大阪へ打ち合わせに移動(翌日府知事と市長へ表敬訪問@ニュース)というご多忙なスケジュールの中、楽しいひとときをありがとうございました。

ワンピース歌舞伎@御園座

猿之助さんルフィを見るために御園座に行ってきました。と言いつつ(右近さんルフィの)昼の部も見てきたのですが、ワンピースに猿之助さんが出てるのを見るの自体初めてだったので、終盤に周り舞台を使って猿之助さんシャンクスがゆっくりと登場した瞬間、やっと会えた…!という感慨でいっぱいに。写真では見ていたものの生で目にすると実感が違いますね。

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青い龍を背負った衣裳が美しく舞台に映えています。カーテンコールも猿之助さんシャンクスが最初に登場なのが嬉しい。ひたすら格好いいなぁ。ルフィのテーマカラーも赤なので、赤いシャンクスに青が加わることで違いがはっきりします。カーテンコールに立つ猿之助さん…熱いものがこみ上げます…やっと会えました…!

そして夜の部の猿之助さんルフィ。台詞のスピード感がすごい。右近さんより速くて台詞の間も詰めています。主役に引っ張られて他の人の台詞の間も短くなり、よりテンポが良くなるのですね。逆にゆっくり台詞を言う見せ場がくっきりと浮かび上がります。

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3姉妹との立ち回りでサンダーソニアの背中を隠してあげるところ、ぱっと布をかけたあとに落ちないように布を前に寄せたり、宥めるように肩をさすったりぽんと軽くたたくような仕草をしていたのが印象的でした。優しいルフィ。

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あと「やった」のシーンって実は今までちょっと違和感があったのですが、猿之助さんのニュアンスでなるほどとしっくり来ました。「やったぁ」と少し「ぁ」が入って、現実に違和感のない言葉運びになっているからかな。

昼の部もですが、チョッパーとルフィのシーンが本舞台に変わっていたのが嬉しかったです。この素敵なシーン、演舞場の時は↓の画像のように、花道でずっと演技して去るのも花道だったので、演舞場の3階は全く花道見えないのがざんねんで。御園座は2階後方からも花道七三が見えますが、やはり正面の本舞台でしっかり見られるのはありがたい。松竹座から変わったのでしょうか?大阪には行っていないのでわかりませんが。ちなみに本舞台では上手側にルフィ、下手側にチョッパーでした。

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そういえば宙乗りのとき、右近さんルフィは黄色のサーフボード、猿之助さんは青色のサーフボードなのですね。色まで違うのは意外でした。演舞場の時は右近さんルフィしか見ていないので、黄色だったのかな?

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ルフィのときのカーテンコールではずっとTETOTEを口ずさんでいる猿之助さんがなんだか可愛くて、他の人に拍手を送りつつつい目は猿之助さんを追ってしまいます。やっと会えた、やっと。1月涎くり、2月高麗屋番頭さん、3月梅笑会で拝見しましたけど、やはりワンピースが復帰作ですね。名古屋じゃなかったら通いたかったなぁ…。

夜の部は下村さんイワンコフで、ミュージカル俳優さんなので歌が入って…!これかーー!オカマ役ですけど声は高くしてないタイプのオカマさんでした。浅野さんとはまた全然違って面白いです。オペラ座の怪人のパロ(曲までパロでまんまかと思いきや長調に転調するのヤメテw)とかちょいちょいミュージカルパロが入って笑いました。ちょっと下ネタ多めですけどね(^^;)

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クザンの仏倒れ…これ何回見てもドキドキします…痛く…ないのですか?痛くないように倒れる技術があるのでしょうか。

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右近さんルフィはすっかり本役となり頼もしいですね。ハンコックの美しさに磨きがかかっていて惚れ惚れ。ルフィももちろん板についてますが、やはり女形が似合う役者さんですねぇ。

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ボンちゃん、夜の部の下村さんイワンコフの時はイワ様が革命の台詞を立て板に水のように喋ったあとに「…解散!」てぶった切るしひどいw

あと、花道からルフィと一緒に本舞台に走っていく途中で何か躓きかけた?(2階からは見えず)のかボンちゃん「危ねっ」って言って、猿之助さんルフィはもちろんルフィのままちょっと振り向いて「大丈夫か、気をつけろよ」と言っていてきゅんとしました。

2回とも2階席で見たのですが、御園座はC席でも花道七三がきちんと見えますし、B席は宙乗りも近くてとてもテンション上がりました。見やすくていい劇場です。ファーファータイム、通路すぐ横ではなかったのですが比較的通路近くだったのでハイタッチもしてもらえましたのが嬉しい♪ 演舞場ではハイタッチできる位置ではなかったので初めてかも。

そういえば夜の部、猿之助さんルフィの宙乗りではタンバリン投げていました。あとでツイッター見てみたら、小さい男の子の兄弟に向かって投げようとしたらしいですね。それがずれてしまったのであとで番頭さんがタンバリンを届けに来たとか。猿之助さん素敵ですねぇ。男の子たち、いい思い出になったでしょうねぇ。

願わくば、大きくなったときにその楽しさを思い出して歌舞伎を見に来てくれたらいいなぁ。そんなことを思った遠征でした。あぁ楽しかった!同行してくれた友はワンピース読んでる人で、キャラクターがイメージそのままに舞台に出てきていることに驚いていました。あと、このキャラがこんなに取り上げられているんだ!という意外性もあったよう。

あぁ、やっぱり舞台上の猿之助さんは素敵だなぁ。名古屋がもう少し近かったら、何回も行きたい公演でした。ありがとうございました。

野田版 研辰の討たれ@シネマ歌舞伎

怒涛のことばの嵐と、走るひとびと。とにかく走る、走る、走る。ああこれが野田さんの芝居なのかなと、去年桜の森を見、いま研辰をシネマで見たところの肌触りです。

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ことばで埋め尽くして、突き上げて突き上げて、そのテンションに少し疲れて、これはオチをどこに持ってくるのかな?と思い始めたところで唐突に一人の役者にスポットを当てて芝居をさせる。それまでは役者よりも言葉。もちろん役者の力があってのものですが、ことばの力というか、ことばの物量が勝っています。それを突如途切れさせて、ひとりにしずかに語らせる。役者に焦点を当て、芝居に持っていく。そういう構造なのだなぁ、なるほどなぁ。
野田さんの芝居を2つしか見ていないので、他も同じ傾向なのか、はたまたまったく異なるのかはわかりません。
 
それにしても13年前の舞台、みなさん若いですねぇ。最初の方で7染五郎さんと勘九郎さんが立会いの手本を見せるところなんか本当に速くて見えません。コマ送りして見たい。手本にしたいって研辰が言うてるのに手本にさせない心意気(^^)それを見た研辰の「若い」って台詞が役の上だけではない感じw
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獅童さんはこの頃はまだシャイな雰囲気。カーテンコールで勘三郎さんが上手に動いたので何かな?と思ったら獅童さんを紹介なさって、獅童さんは照れたような反応。先日超歌舞伎で5000人を前に堂々たる姿で大歓声を集めていたのを見たばかりだったので、なんだか新鮮。勘三郎さん、きっと喜んでいますね。うらやましく思っているかも?

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お芝居自体はほとんど、3人と群衆の劇。討たれる一人、討つ二人。とやこう言う群衆。勝手な周囲。痛烈な皮肉が見えます。流行りで言うことが変わる、その場の雰囲気で言うことが変わる群衆に押し流されてゆく登場人物たち。7染五郎さんが大変格好いい。いいお役ですね。「最近阿修羅のように活躍して…」と言われてるということは、阿修羅城の瞳の頃ですかー。

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勘九郎(当時勘太郎)さんは声が今よりずっと高いですね。弟という役柄だからでしょうか?最近の舞台では聞かない声。太い役をやるために封印なさっているのかな。とても綺麗な声でした。

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実はこれが襲名披露の公演とは知らなかったのですが、映画が始まり、祝幕を見て襲名だったのか!と。襲名にこの演目を持ってくる、その覚悟というか生き様というか。そして歌舞伎座の襲名は3か月だったことにも驚きます。3か月間、客席をいっぱいにする力がおありだったのですね。2005年5月夜の部、研辰の前の演目が玉三郎さんの鷺娘で、ああこれも見たかったなぁと嘆息。さらに2005年3月の襲名の演目は玉三郎さんとの鰯売!と、ついつい過去に思いを馳せてしまうのでした。

中村屋三代「鰯売恋曳網」 | 木挽町日録 (歌舞伎座の筋書より)

2018年4月御園座新開場、高麗屋襲名

開場式の記事

開場式:2018/3/28

一般公開されない開場式では三番叟を幸四郎さんが舞われたとか。こけら落としと言えばこの舞踊。いつぞやトークで、ご自身が一番やられた舞踊は三番叟、ともお話されてました。お客様が多かったため開場式を二度執り行ったそうです。

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初日行ってきました

対面の幕開きで「御園座こけら落とし!」「待ってました!」「おめでとう御園座!」と大向こうが。

口上

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歌六さん「美少年の誉れ高い染五郎くんは残念ながら学業優先のため…」美少年ネタ来た笑

鴈治郎さん「3年前に襲名させていただきました中村鴈治郎でございます。壱太郎で吉田屋が出るというので相手役は私かと思いましたら、新幸四郎さんでした」会場笑「上方のお芝居もぜひ、しかしあまり私の領分を侵さぬよう…」
対抗意識(^^)(^^)(^^)

秀太郎さんが「新染五郎くんも含めて益々の…」と、出演していない染五郎くんのことも触れてくださっていて嬉しかったです(*´-`)
みんなのお母さん…だいすき…(*´∇`*)

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口上のセットは背景が歌舞伎座と異なり、緑の背景に桜模様、四ツ花菱と浮線蝶があしらわれて春らしい装い。ここでも三ツ銀杏はお休みでしたね。

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廓文章

伊左衛門みたいなひとは現実にはイヤですが(コラ)、役者さんの魅力で可愛く見えてしまう不思議。紙衣が破けるのを心配する姿とか、廓に通してもらって夕霧を待ってうろうろしたり、壁にもたれかかったり、三味線弾いたり。

夜の部は口上がない代わりか、襲名をお祝いして秀太郎さん仕切りで大阪締めをしました。関西圏以外の方は大阪締めを調べておくと吉です(^^)3回目の叩き方が独特。
去年大阪松竹座の船乗り込みで大阪締めする仁左衛門さん動画を延々見てたから覚えてて助かりましたー←

上方式を見たことがないので今回の東京式の清元になったときの違いはわかりません。今度上方式も見てみたいなぁ。できれば仁左玉で…(><)

かかったら通いますわ、ほんま…

勧進帳

(勧進帳でがんじろはんの義経見た瞬間、丸い義経だな…て思ってしまいました。ご、ごめんなさい!!1月のしゅっとした義経が脳裏に残ってたから!!!)

梶原平三誉石切

芝居として一番見ごたえがあったのは、ノーマークだったこちらでした。

一瞬一瞬、ほんとうにその役のひとを生きてるのですよね、吉右衛門さんは。梶原平三以外のなにものでもない。逆説的ですが、演じていないみたいにすら見えます。演技だということを忘れさせる演技。

 

鶴瓶花街酔醒

妖刀に魅入られてからの変貌ぶりもなかなか。日を重ねるごとに狂気も増していったという話なので、歌舞伎座でかかったらまた見に行きたいです。

御園座内の様子、外の設備など

 

襲名関連グッズ

写真入らないと初日時点では聞いていたのですが、会期も後半になってから写真が入ったとの情報が…。御園座さん謎です。。

お弁当などの物販が狭い廊下でも行われているので混雑してなかなか大変な印象でした。

御園小町、お昼ご飯など

 

御園座さんのざんねんなところ

初めての御園座さん、2階席後ろからも花道七三が見えますしお手洗いの数も多かったり食事処も安い、よい劇場だと思うのですが、巷で話題のチケット問題がざんねん…。4月は一般発売の段階でS席完売でしたが、直前に全席種戻るという。初日はさすがに満席でしたが、上演中、花横で役者が演技しているときに関係者用らしき花外の高い位置の前方席を出入りしたり席にいてもヒソヒソ話してるスーツの方々がいたり(花道見ると目に入ってしまうことに気付かないのでしょうね?)、演劇への敬意、観客に対する意識の低さを感じたり。経営方針がずさんなのか営業・広報がだめなのか、まともな方がテコ入れしてくださらないと駄目でしょうねぇ。改善されるまでは御園座さんで歌舞伎がかからないといいな。そんなことを思ってしまう旅路でした。

なんだかんだ、発売日に走れば良席がちゃんと取れる歌舞伎座はいいなぁ。

5月衛星劇場pickup

5月のまとめるの忘れていました、まとめないと録画予約もできていないので危ない。仁左衛門さん玉三郎さん幸四郎さん勘三郎さん勘九郎さん七之助さん梅玉さん。
3日に仁左衛門さんの筆法伝授と道明寺ではないですか…!


◆権三と助十(1,23)
中村獅童 市川染五郎(現・松本幸四郎) 中村七之助

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隅田川(1,24)
中村梅玉

越後獅子(2,11,17)
中村富十郎

◆菅原伝授手習鑑~加茂堤(3)
中村梅玉

◆菅原伝授手習鑑~筆法伝授(3)
片岡仁左衛門

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◆菅原伝授手習鑑~道明寺(3)
片岡仁左衛門

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◆菅原伝授手習鑑~車引(3)
中村梅玉

◆菅原伝授手習鑑~賀の祝(3)
中村梅玉 坂東玉三郎

◆菅原伝授手習鑑~寺子屋(3)
坂東玉三郎

あらしのよるに(4)
中村獅童

◆身替座禅(7,29)
片岡仁左衛門

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◆与話情浮名横櫛~見染・源氏店(8,17)
市川染五郎(現・松本幸四郎

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◆蔦紅葉宇都谷峠(10,21)
中村勘九郎(十八世勘三郎) 

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◆蝶の道行(14,30)
中村梅玉

義経千本桜~すし屋(16)
市川染五郎(現・松本幸四郎

◆平家女護島~俊寛(28)
中村勘三郎 中村勘太郎(現・勘九郎) 中村七之助

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◆松竹演劇だより Vol.3(10,15)
◆松竹演劇だより Vol.4(25,31)

---歌舞伎以外---
◆ゲキ×シネ『阿修羅城の瞳2003』(3,26)
市川染五郎(現・松本幸四郎

 

超歌舞伎2018「積思花顔競」 現地入りしてきました

2017年の超歌舞伎はタイムシフトとTVで拝見し、生で見るとどんな感じなのだろうと興味を持ち、ミクさん好き友人(歌舞伎未見)に「来年は一緒に行かない?」とお誘いしていたのでした。ボカロは全く知らない上にライブに行ったことがない私は、日が近づくに連れ、「サイリウム?ナニソレ?」とか「曲を予習した方がいいんかいな…」とか、ニコニコ動画はほとんど見たことないので果たしてイベント会場の雰囲気についていけるのか!?とか段々不安になっていたのですが。

いざ行ってみたら、最高でした…!要所要所でテーマ曲が使われ盛り上がる会場。しかしやっていることは歌舞伎ど真ん中という印象です。それがうまくデジタルと伝統的な歌舞伎が融け合って、一つのエンタメになっていました。

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最初は「お祭り」(祝春超歌舞伎賑)、舞台復帰は昨年すでに果たされていた獅童さんですが、病気からの復活を祝って差し込まれた所作事。粋な鳶頭姿が格好いい。

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29日の松竹超縁日ブースでのトークにて、詞章の「~花舞台」の後で「待ってました!」とかけるのだと的確な指導があったおかげでしょうか、降るような「待ってました!」に感激(TT)

実は事前に歌舞伎のお祭りの映像は見ていたのですがタイミングがわからなくて諦めていたので、脚本家らしい松岡さんの具体的なアドバイスに感謝。1回目は近すぎて勇気が出なかったのですが2回目は遠方席より掛けられました。初めての大向こうです。待っていた想いがいろんなひとと一緒の声になって、役者さんに直接届いて「待っていたとはありがてぇ」の台詞が続く。様式美なのですが様式以上の気持ちのやりとりがあって、込み上げるものが。

そういえば悪役の印象が強かった國矢さんもお祭りではこんなに素敵な男。

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トークでしきりにご自身の役を「ババア」と連呼していた蝶紫さん、禍々しさがいい感じでした。一昨年は蝶の黒衣とミクさんの中の人、去年は花魁(台詞なし)、で今年は台詞が欲しいと言ったら「ババア」役と仰るので「親王の乳母ですからね?」と脚本の松岡さんに突っ込まれてましたが(笑)。

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國矢さんとの悪い人コンビがイイ感じです♪

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そして、善人役の獅童さんが似合ってるのはもちろんなのですが、

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(この初音姫と安貞のいちゃーシーンはミクさんファン的にはどう見てたのでしょう(^^)すぐ邪魔が入るから短いけども。この二人のシーンてほんと短いので現地で「ご両人」の大向こうはかからなかったなぁ、かけるタイミングなかったのだろうなぁ。)

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 悪役の獅童さんがめちゃくちゃ格好いい。

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ミクさんうっかり惚れるとかないんですか…?(こら)

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ほらほーら、つい惟喬親王でもいいかなってなりませんか…?(いけません)

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こうして並べて見ると歌舞伎って本当に絵のように美しい。思わずその一瞬を切り取りたくなります(※超歌舞伎の画像はすべてニコニコ動画より)。型と衣裳から来る美しさでしょうか、演劇の中で群を抜いていると思います。衣裳も原作「関の扉」より取られているよう。樹の幹から登場するのも原作そのまま↓なのですね。

(平成20年2月歌舞伎座

この演目見たことないので最近やったのはいつかなと調べたら、2015年12月歌舞伎座でかかってました。配役が

関守関兵衛実は大伴黒主 = 尾上松緑(4代目)
小野小町姫 = 中村七之助(2代目)
良峯少将宗貞 = 尾上松也(2代目)
傾城墨染実は小町桜の精 = 坂東玉三郎(5代目)

という…!小町姫が七之助さんで墨染が玉三郎さん…!!普通は一人二役でやる役だそうですがお二人で…見たかったー!画像を探していたら、獅童さんも2010年に玉三郎さんと関の扉をやってらっしゃる。見たかっ(以下略)…あと7年早く歌舞伎に気付いていれば…

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あと、戸板倒し…!生で初めてみました。二枚の板の上に一枚の板が渡されると結構な高さ。

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一人の支えだけでバランス取って立っているだけでもドキドキするのに、かけ声とともに倒れていき、地面につく直前に飛び上がって着地。緊張感で会場がシーンとなり、成功した後の歓声。昔考えられた演出が、現代で5000人も入るホールで盛り上がれるのもすごい。考えた人は天才ですね。

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ミクさんの白鷺の精は「鷺娘」のぶっかえり後の衣裳から取られたようなデザイン。

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歌舞伎の「鷺娘」の衣装とついでに映像もちらり。36秒あたりからまさにこの拵えで舞って美しく息絶えてゆきます。

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youtu.be

鷺娘/日高川入相花王 | 作品一覧 | シネマ歌舞伎 | 松竹

楼門五三桐の石川五右衛門↓ばりの惟喬親王然り、これは古典のあれがモチーフか!ってなるのが面白いですね。台詞もそうですし、山門のデザインもそのまんま。

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ようこそ!歌舞伎の国へ 第3回「桜門五三桐」 | 歌舞伎美人(かぶきびと)

超歌舞伎のパンフに歌舞伎座のチラシも挟んでおいたらいいのに、とか。獅童さん出ないけど興味を持ってくださる方もいるかもしれないですし。幕張のホール5000席×4回=2万人。テレビなどで「歌舞伎の真似」すら少なくなって、若い人が歌舞伎を知る下地を失っているという話になるほどと思ったのですが、もしかして超歌舞伎は若い人の「歌舞伎ってこういうもの」の下地になりうるのでは。いや、もうなっているのかも。動画閲覧者は延べ21万人、4回とも見てる方もいるでしょうが千穐楽だけで9万4千人近い。歌舞伎座で25日間公演しても49100人なのを考えると、すごい数です。

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そうそう、客席の対応力に驚いたのが大膳らの闇討ちの場面。役者さん達が赤い松明をかざすのに合わせて客席でも赤いサイリウムがあちこちで…!2日目の13時の回でも結構な数でしたが千穐楽は客席一面に真っ赤なサイリウムが揺れて幻想的ですらありました。帰宅して初日13時の動画を見てみたら、カメラが映る箇所には少なくとも赤いライトは見当たらず、いつからどなたが思いついたのか、それを見た人が次は私も、と続いてあの光景ができあがったのだなぁと。國矢さんもツイッターであの光景のことに触れられており、役者さんにも印象的だったのだなと嬉しくなりました。

よく考えるとミクさんファンのひとも大膳側=初音姫と安貞の中を引き裂く方に加担したってことですけどね(^^)そういえばトークで大膳(というか國矢さん)がまた初音姫に失恋する話がもとはあったけれど稽古を経てなくなった風なお話も。脱失恋キャラ、おめでとうございます(^^)(^^)(^^)

ミクさんとの掛け合いはぴったり合うときもあれば少し間が空く時もあり、呼吸や気配のない相手と演じたり踊ったりはたいへんだろうなぁと。ミクさんの台詞をイヤホンガイドみたいにタイミング計ってGoしたら良さそうですが、技術的に難しいのでしょうか。千穐楽獅童さんがミクさんの台詞を食ってしまって、やり取りが終わった後に「…ごめんね、ミクさん」って、可愛い姿が見られて得した気分でしたが(*^^*)ミクさんが山車から降りて舞台に立ったように見えるところとか、桜の木から現れるところとかは、映像技術のすごさを感じましたねぇ。

あと、トークで「サイリウム振る合図が獅童さんからありますから」と仰るのでどんな合図だろうと思ったら、獅童さん思いっきりサイリウム2本持って登場ー!わかりやすー!!

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会場を縦横無尽に走り回る姿に、復活を実感して終演後に思わず涙が。友人の手前こらえようと思ってたのにがまんできなかったですよー。舞台復帰は去年とうになさっているし1月演舞場も拝見しているのに、超歌舞伎ではご本人も「幕張に帰ってきたぞ!」感がはんぱなくて、感慨深げに客席見まわしたりなさるし、感涙でした。

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そう、せっかく超歌舞伎なので大向こうをかけられたらと思っていたのですが芝居に集中すると案外かけられないものですね。今まではかけられる人をうらやましく思うこともありましたが、かけられない人間だったことに気づけて良かったかも。だって見得するとことか見入ってしまい、附けのあとに屋号かけようとか冷静な頭回りません…!いいタイミングでかけてくださる大向こうさんの凄さを実感しました。でも安貞復活の場面だけは万感の思いを込めて「萬屋!」とかけたら、両隣の青年(たぶんミクさんファン)もつられて「萬屋!」とかけてくれて。掛けてみたいけど周囲にかける人がいなくて今まで踏み出せなかったのかな?なんだか気持ちがひとつになったみたいで嬉しかったです。歌舞伎座ではできない体験をさせていただきました。それにしても会場全体でいくと「初音屋」のときの大向こうの分厚いこと分厚いこと…!ミクさん超人気。あ、あと鏡音リン・レンさんが出てきたときに近くの方が「お?おおお!?」て興奮したご様子、何かなと思ったら初日には出てなかったレンさん?が2日目に登場したからだった模様。制作サイド、最後まで粘ったんですね、おつかれさまです…!

これもトークで、「いろんな色のサイリウムが」と國矢さんが仰ったら司会さんが「統一した方がいいってことですね」と仰ったので「いや統一しない方が綺麗だと思います」と返してらしたのですが、確かにこの色とりどりの灯りはとても美しい。

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安貞復活後の場面は獅童さんはあちこち走り回るし國矢さんも舞台正面で立回り、蝶紫さんはL字花道で立回りしてるしで、13時の回は目が足りなくてけっこう気づかなかったので、2回目も見ておいてよかったです。次回は1回目自由席で俯瞰して見て、2回目指定席で間近で見るのがいいかな、と。2階席の時も1階にいる獅童さんが手を振ってくれたのも嬉しかったなぁ。ライブ好きの友人曰く「煽りがうまい」。彼女も初歌舞伎を心から楽しんでくれて来年も一緒に行く約束をしました。千穐楽はアンコールに千本桜もやってくださって大盛り上がり、めちゃめちゃ楽しかったです。

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サイリウム振るのはライブ慣れしてる子と一緒に行けて踏み出せましたが、でもでも、別に隣の人が知り合いじゃなくたって全体のノリに合わせて点けたり振ったりしてれば案外イケるもんですね。今までライブは行ったことがない&派手なことが苦手な性分なのに、2回目は一人で会場に乗り込んじゃった(サイリウム借りました笑)超初心者の実感です。普段は静かな音楽聴いてることが多いんですけど意外なほどめちゃめちゃ楽しめたので、そういう人もきっとだいじょうぶだよ…!

というわけで、まだ生では超歌舞伎を見たことないという方、ネットでも見たことないという方も、ぜひ来年は現地で盛り上がりましょう…!

絵本合法衢 一世一代の千穐楽

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4月千穐楽の夜の部。開演前から、最後だ、今日で終わってしまう、と緊張と動悸がしながら見始めましたが、一幕目の後半にはもう、いつものように舞台に引き込まれていました。大詰、閻魔様のシーンの幕が開いて、いよいよ終わってしまう現実を思い出して切なさでいっぱいに。頭上で合法の刀を受ける大好きな型も最後かとか、目を閉じて刀を両手で頭上にやって目を開く見得の格好良さとか、終わらないでと祈るような気持ちで食い入るように見ました。

大学様が刀を受け、もがき、とうとう倒れ、弥十郎と皐月に止めを刺される。あぁ終わってしまった。万雷の拍手の中で起き上がる仁左衛門さん。この演目に拍手を送れるのも最後。切り口上の「まず今日はこれ切り~」をこの演目で聞くのも最後。「今日は」と仰るけれどもう仁左衛門さんの絵本合法衢は二度と見られないのだと切なくなりながら、拍手を送り続けました。終わってほしくない、この時間と空間が。そう思い幕が閉じても拍手を送っていました。

正直、幕が再び開きはしないだろうと思っていました。もしかして、という気持ちもわずかにありましたが、仁左衛門さんがカーテンコールを好まないことを本や記事で読んだり、色々なお話を聞いていたので、ほぼないだろうな、と。それでも拍手をし続けていたかったのです。拍手を止めて劇場を出てしまったら本当に舞台の夢から覚めてしまう。夢から覚める時間を少しでも先に延ばしていたかった。終演後、急いで帰られた方々(遠征組の方もいらしたかも)以外は大多数の方が劇場に残って拍手を続けていたように思います。直後の終演アナウンスは拍手にかき消され、拍手のボリュームがずっと収まらずに、こうしてたくさんのお客様と一緒に拍手を送り続けられるしあわせと、終わってしまった切なさに浸っていました。帰りなさいという雰囲気になるまでは1秒でも長くそうしていたいと思っていました。

どれくらい拍手を送っていたでしょうか、孝太郎さんブログによると終演後5分ほどということでしたが、ゆっくりと幕が開き始めて客席からどよめきが。それでも油地獄の千穐楽の話を聞いていたので舞台上に仁左衛門さんがいないかもしれないと身構えていました。すると、舞台中央やや下手くらいにおひとりで座っていらして。登場してくださった!という喜びのあとに一瞬、カーテンコールを好まない仁左衛門さんはどういう気持ちでそこにおられるのか、間違っても無理に出てくださったりしていないか、と不安になりました。

が、その不安を吹き飛ばす素敵な笑顔、心からの笑顔…!演じ納めの最後の日に、大学之助様の拵えで役者・片岡仁左衛門として観客に向けてくださった笑顔に射抜かれて、しあわせいっぱいに。笑顔で左右に礼をされ、正面に向き直り「ありがとう」と祈るかのように手を合わせられ、最後に深々と礼。そして幕。感激で涙が滲みました。終わってしまう切なさを吹き飛ばすしあわせ。なんて幸福な時間に居合わせられたのでしょうか。すべてに感謝しかありません。ほかほかした気持ちを胸に、しかしそれでも離れがたくて、なるべくゆっくりと劇場をあとにしました。


帰宅して孝太郎さんブログの動画でカーテンコールの記憶を反芻ししあわせを噛みしめながら、その客観的な短さ(45秒くらい)に驚きました。現場にいた体感ではまるで刻がゆっくり流れたかのようにたっぷりと感じました。感激のあまりそう感じたのか、客席と舞台がひとつに結ばれたからなのか。舞台の魔法にかかったようです。
そうこうしていたら彌十郎さんブログにも更新が。切り口上で幕が閉じたあと、いつも通りに3人(仁左衛門さん時蔵さん彌十郎さん)で楽屋に帰り、いつも通りに仁左衛門さんの楽屋に挨拶に行かれ、そのときすでに仁左衛門さんは衣裳を脱がれていた、と。仁左衛門さんはカーテンコールを予定していなかったのですね…!それでも拍手に応えて衣裳を着直してまで舞台に出てくださった。なんてありがたいのでしょう。

孝太郎さんブログ「幕が降りてから五分後?」
https://ameblo.jp/takataro-kataoka/entry-12371426688.html
彌十郎さんブログ「熱いお客様」
https://ameblo.jp/yaju1956/entry-12371479235.html

一世一代の千穐楽に立ち会えた喜びを噛みしめながら、これからも舞台を見続けて参りたいと思います。心から、ありがとうございました。